September 21, 2004

The Places We Meet / Stewboss (Stewsongs)

The Places We Meet / Stewboss そのあまりの完成度の高さに、次こそメジャーかと密かに期待していたロサンゼルスのトリオ、またしても自主制作の3枚目。前作『Sweet Lullabye』では、バンドのアンセムになりえる名曲♪Counting to 7 at Your Old Barstool (Time) を生み、UKツアーを成功させるなど着実に地盤を固めてきました。一時期解散の噂も流れ心配しましたが、そんな不安を吹き飛ばす、今回も超快作。ギター、ヴォーカルの他にも、ドブロ、バンジョー、フィドル、マンドリン、ダルシマーなどのあらゆる弦楽器をこなすニュージャージー出身のメイン・ソングライター、グレッグ・サーフェティの引き出しの多さを改めて実感させるバラエティ豊かな仕上がりですが、絞り出したような苦しさや、逆に無理矢理詰め込みすぎたような窮屈さのない、湧き出るアイデアを手ですくえた分だけ取り入れているかのような、欲のない感じが彼らの持ち味。泣きのバラードからミドル・テンポのフォーク・チューン、元気いっぱいのパワー・ポップ・ナンバーからドライヴするR&Rチューンまで変幻自在に繰り出します。カジュアル版カウンティング・クロウズ(Miles of Music評)みたいな趣もありますが、ストーンズやトム・ペティ、スプリングスティーンらのエッセンスをセンスよく消化しながら、ごく自然なかたちでStewboss節のようなものがすでに確立されてしまっているところも見事です。今度こそ絶対にメジャーが放っておかないと思うけど、この完成度なら全然自主制作でオッケーなような気もします。SlobberboneWill Hogeと並ぶ「中堅アメリカーナ三羽ガラス」の保証付き。

Web版LAST HURRAH のインタビューに応えてくれました!

Deja Vu All Over Again / John Fogerty (Geffen)

  アメリカの、いや世界のお父さん代表、C.C.R.のジョン・フォガティ。ライヴ盤の『Premonition』(1998年)を除くと実に7年振りの復 活第2弾・・・っていうか、この人の場合、毎回復活盤なんですが。再びアメリカの反戦集会で定番テーマ曲になっているという"Fortunate son"をはじめ、C.C.R.時代にも数々の反戦ソングを歌ってきた怒れる親父ジョン・フォガティ。今回も♪これじゃまるでデジャブのようだ・・・と ちょっと"Have You Ever Seen The Rain?"っぽいのっけの【1】から懲りないアメリカを痛烈に批判。同じく反戦色を打ち出した新作をリリースしたばかりのグリーン・デイに負けじとラモーン ズばりのパンク・チューン【3】には思わず腰抜かしそうになりましたが、C.C.R.時代を彷彿とさせるグッド・メロディの数々に、今回も思いっきり和んでし まいました。"Sultans of Swing"にそっくり(!)なマーク・ノップラー弾きまくりの【6】以外は、今回は豪華ゲストの客演もなく、前作『Blue Moon Swamp』(1997年)よりも少々コクが足りないような気もしますが(バック・バンドの布陣もケニー・アラノフ以外はチェンジしています)、これはこ れで落ち着いた作風でとても味わい深いです。こういう世相がこの作品を生んでくれたのかと思うと何とも皮肉で残念ですが、こんなふうに、まだまだアメリカ にも良心はあるんですよね。ブルース・スプリングスティーンジョン・メレンキャンプジャクソン・ブラウンR.E.M.Pearl JamThe Dixie Chicksらが集って空前の規模で展開される反ブッシュ・キャンペーン "VOTE FOR CHANGE" ツアーにも参加が決定。こんどこそ来日公演も実現させてほしいものです。にしても、このジャケ写がまたかっこよすぎじゃないですか。
※これ国内盤出ないってどういうことですかっ!?>ユニバーサル・ミュージック殿

September 07, 2004

Folker / Paul Westerberg (Vagrant)

Folker / Paul Westerberg  なんだか最近やたらとリリースが目立つので、オリジナル・スタジオ盤と企画盤の区別すらあまりついてなかったんですが、オリジナル・スタジオ盤としては 2002年の『Stereo』以来2年振りのソロ5作目。途中にGrandpa Boy名義でFat Possumレーベルからリリースしたブルース・アルバム『Dead Man Shake』とか、自身のキャリアを綴ったドキュメントDVDのサントラ盤としてリリースした『Come Feel Me Tremble』(日本ではなぜかこのたび『Folker』と同時リリース)とか、いろいろ出てますが、個人的には2作目の『Eventually』 (1996年)以降の作品はどれもパッとしないというか、決して悪くはないんだけど、テキトー過ぎるというか。ニック・ホーンビィに言わせると「どこかと りとめがない」(『ソングブック』新潮文庫よ り)ってことになるんですが。そのとりとめのなさがこの人の魅力だと言ってしまえばその通りだと思うし、贔屓 目で見れば“パーソナルな作品”とか言って好意的に捉えることも可能なんだろうけど、僕にはどうもそれがこの人の負け犬根性の表れのように映ってしま い・・・もちろんそんなことないんだろうけど、だったらライアン・アダムスに 向かって、俺の真似してばかりでけしからんとか、もういいかげんそういうこ と言わない方がいいと思うんですよね。いつまでそんなこと言ってるんだって。でもまぁ、そういう大人げないところもこの人の魅力のひとつってことになって るんですが。そりゃライアン・アダムスを 見ていれば、本人も認めている通りこの人からの影響は明らかだし、テキトーな作品出すところまでそっくりなんです が、ライアン・アダムスにとっての『Gold』みたいな本命盤をこの人にも是非創ってもらいたいんですよね。自宅のスタジオでワンマン・レコーディングし たヘタヘタの演奏とヨレヨレのヴォーカルが、この人の神髄なのはわかる。でも、ちゃんとプロデューサー立てて、バック・バンド従えて、きっちり録ったもの を聴いてみたいと思ってしまうのは僕だけでしょうか。とにかく今回は曲がいい、と本人も自画自賛の今作。確かに曲のクオリティが最高なだけに、いつ にも増してそこのところが残念です。でも兄貴、久々に愛聴してます!