August 30, 2004

We Were Born in a Flame / Sam Roberts (Lost Highway)

We Were Born in a Flame / Sam Roberts 昨年4冠に輝いたアヴリル・ラヴィーンに替わって、今年のJuno音楽賞(カ ナダ版グラミー賞みたいなものですかね)で、『Artist of the Year』『Album of the Year 』『Rock Album of the Year』の3賞を受賞したカナダはモントリオール出身の5人組メジャー・デビュー作。このたびLost Highwayがボーナス・トラックを2曲追加してインターナショナル・リリースしてくれたおかげで、やっと僕の耳にも届きました(と言いつつ僕が手に入 れたのはボーナスなしの通常US盤なんですが)。UK盤はジャケがメンバー写真だったり、インターナショナル盤(ここに載せてるもの)ではバンド・ロゴが アメリカンな感じになっていたり、結構マーケティング戦略がマメなんですが、サウンドの方もパッと聴きシンプルで地味に聴こえるも、よく聴き込むとこれが 実に緻密でバラエティ豊か。はじめて耳にしたとき、オーストラリアのバンドかな?って思ったんですが、蓋を開けてみたらカナダ出身ってことで、ああなるほ どなぁ、とそんな感じの音(?)です。同じカナダ出身のSloanの 作品も手掛けたブレンダン・マクガイアがプロデュースしてますが、スローンよりも更に懐深く、アメリカン・ロックの奔放さとブリティッシュ・ロックの湿っ ぽさを併せ持ちながら、60年代のようなフォーク風味と70年代のグルーヴ、80年代のエレクトリック加減と90年代のモダンさを絶妙にブレンドしたよう な、それはそれは天晴な仕上がり。プロのホッケー選手&モデルという肩書きも持ち、ヴァイオリンも弾く中心人物サム・ロバーツのシンガー・ソングライター 然としたキャラクターも魅力ですが、個人的にはバンドとしても好感度大です。どうしてもかつてのAmerican Recordingsのような役割を期待してしまうLost Highwayですが、これでやっと新人発掘成功ですね。

August 24, 2004

Tambourine / Tift Merritt (Lost Highway)

 1975 年テキサスはヒューストン生まれ&ノース・カロライナ育ちのアメリカーナ界期待の新星ディーヴァ。ジョン・ハウィ率いるTwo Dollar Pistolsとの共演や、自身のバンドCarbinesを率いて地元ノース・カロライナのローカル・シーンで名を馳せるうち、同郷のライアン・アダムス に見定められ、Lost HighwayのA&Rに抜擢された彼のマネージャーを通じてLost Highwayからソロ・メジャー・デビュー。これまたライアン・アダムスからの紹介か、プロデューサーにイーサン・ジョーンズを起用した2002年のデ ビュー作『Bramble Rose』では、ほぼそのままCarbinesのメンバーをバック・バンドに従え、エミルー・ハリスやルシンダ・ウィリアムスの 後継当確を思わせる堂々とした歌いっぷりを披露。世間で吹き荒れるノラ・ジョーンズ旋風なんてどこ吹く風、こっちはティフト・メリット台風直撃でした。で、2年という順当なインターヴァルで届いた超待望の2作目。今回プロデューサーに起用されたのは、ここのところすっかりUKもの&モダン・ロック系に掛かりっきりだったご無沙汰 ジョージ・ドラクリアス(ジェイホークス育ての親)。前作でバックを務めたCarbinesのメンバーは、かわいそうに今回は招集されず、お馴染みマイク・ キャンベル&ベンモント・テンチ(Tom Petty & The Heartbreakers) をはじめ、ジョー ジ・ドラクリアス人脈総動員の顔ぶれがズラリと名を連ねています(このクレジットを見ただけで音 が聴こえてきちゃう人もいるのでは?)。デビュー作での初々しさというか、ちょっと萎縮した硬さのようなものはすっかりなくなり、逆に百戦錬磨の布 陣をバックに伸び伸びと奔放に歌う彼女の姿には、早くも貫禄が漂いはじめています。【2】や【9】のような親しみやすいポップなナンバーが華やかな彩りを添え、モノクロームだったデビュー作に比べてかなりカラフルな印象も。2曲を除いてすべて単独書き下ろしの曲のクオリティも格段に向上していて、ゲイリー・ルーリ ス(The Jayhawks)とマリア・マッキーニール・カサール(2005 年1月来日決定!詳細はこちら) がコーラスで参加の【6】なんかはもう、久々に胸をえぐられるような想いがしました。それこそマリア・マッキー以来の この新星ディーヴァの誕生を、全面バックアップしているかのように見える豪華ゲスト陣も、これなら是非参加させてくださいと志願してたとしてもまったく不思議じゃありません。イノセンスに満ちた美メロに、胸の透くようなコーラス・ハーモニー。そこに寄り添うようによく鳴くプリミティヴなギター・サウンド。そのす べてを包み込むような優雅なハモンドの響きに、優しいウーリッツァーの音色。そんなアメリカーナの醍醐味を存分に堪能できる名盤です。 1998年にアルバム1枚で散ったFive Easy Piecesのギタリスト、ジェイソン・サイニーの参加も感激。