October 15, 2004

Time I Get Home / Dan Israel (Eclectone)

  ミネアポリスと言えば、なんといってもボブ・ディランとプリンスが有名ですが、この街が輩出したバンドとして、Hüsker DüやThe Replacements、Soul Asylum、The Jayhawks、Honeydogs、Semisonicなど、80年代〜90年代にかけて次々に産声を上げた大切なバンドのことも忘れるわけにはいき ません。主要音楽都市から遠く離れたこの地味な中西部の街に、なぜこれだけのバンドを生む土壌があるのかということについては、僕もいちど本腰を入れて研 究してみたいと思ったりもしてるんですが、いかんせんまだ一度も行ったことすらない街なもので。そんな僕が、これぞミネアポリス・サウンド!と叫んでみた ところで、全然説得力のかけらもないんですが、このダン・イズラエルこそ、僕のイメージするミネアポリス・サウンドを見事に体現してくれる人。隣接するカ ナダから南下してくる氷河の影響で"10,000 Lakes"という俗称で知られるほど湖の多いミネソタ州(とにかく寒いことで知られるその気候は、The Jayhawksの"Hollywood Town Hall"のジャケ写を見てもよくわかります)。その州都セントポールとともに、ミシシッピ川を挟んで双子都市(ツインシティ)を形成する州最大の都市ミ ネアポリス。ポピュリズム運動の拠点としても知られ、そのリベラルな土地柄のせいか、この街から生まれる音楽には不思議と“寛容”とか“誠実”という言葉 がよく似合い、虚勢を張らない普段着で等身大な彼らの姿勢に、僕はいつも心を打たれます。シカゴやオースチンでキャリアをスタートさせたダン・イズラエル は、98年にミネアポリスでThe Cultivatorsを結成。99年発表の2作目『Mama's Kitchen』では、土っぽいルーツ・ロック的な感覚を、溌剌としたパワー・ポップ的なアプローチでキャンバスいっぱいに描いてみせ、当時のオルタナ・ カントリー・ファンとパワー・ポップ・ファンを同時に魅了しました。その後、2000年と2002年にソロ名義でアコースティック・アルバム、2003年 にDan Israel And The Cultivators名義(ただしメンバーは総入替え)で1枚出していて、今作で通算6作目。トム・ペティにたっぷりシロップをまぶしたような甘く切ない メロディに涙の【1】【8】に、Vandaliasも真っ青のキッチュな(ゴメン!)パワー・ポップ・チューン【2】など、まさにオネスティの塊のような 1枚です。いまだにフルタイムの定職に就きながら音楽活動を続けているというダン様。絶対メジャーにはなれないと思うけど、いつまでもミネアポリスのローカル・シーンでマイペースな活動を続けていってほしい・・・と理不尽に祈り つつ、こういう作品にめぐり逢うたび、僕のミネアポリスへの想いは果てしなく募っていくのでした。

※ミネソタ在住日本人によるミネアポリス周辺情報サイト Cafe"Minnesota"